はい、こちら河合探偵事務所

ボンジュールマダム!
6-2
高一の家出娘の消息を見つけ出すのが、ねねと健太の名? コンビの目下の仕事だった。
「東京に潜んでいるらしい、ということだけはね。何人かの友人にそう言いふらしていたらしくて、その一人が教えてくれたの。でもねぇ、東京と言っても広いから。どこをどう捜したらいいのやら。今、友人から情報を色々と、集めているところ。健ちゃんが、飛んでる家出娘のお友達だとか何とかと言い寄ってね。うまいのよ、そういうのって。どことなくとぼけてるでしょう? 余り人を警戒させないのね」
 健太は褒めてくれてるつもりなのかどうかよくわからなかったので、取りあえず苦笑いした。
「心配ないよ、と彼女らはあっけらからんとおっしゃる」とねね。「小遣いが無くなれば戻ってくるからって。でもね、東京には狼が、あっちこっちにふらふらしてるのよ。と私が脇から口出したら、なーに、この野暮なオバチャンはなんて具合に、ジロリと睨み付けられちゃって。で、私、それっきり貝になりました。ここは健ちゃんにお任せして、黙ってジュースを飲みながら、耳を傾けてたんだけど…。今時の若い娘は大胆と言おうか、怖い物知らずと言おうか、一歩間違えばエライことになる、危険と落とし穴がぽっかり開いてるのに、警戒心が足りなさ過ぎと言おうか…。楽しくやって何が悪いの? みたいな感じで。悪くはないけど、でも取り返しのつかないことになっちゃったらと思うの。聞く耳持たないから」とねねは吐息をついた。
「まあ、それが若さというものだとは思うけど…若い娘を持つ母親としては心配よね。同年代の娘を持つ私としては、頭が痛いわ。私たち年配の女性がしっかり守ってやらなきゃなんだけど…素直に言うこときかないから難しい」 と弥生は苦笑いした。
「いずれにしても早く見つけ出さなくっちゃ」とねね。
「ということは」と弥生は目の前の現実に心を戻した。
「明日も新幹線に乗って、東京まで健ちゃんと、おデートってこと?」と弥生は若い人はいいなあ、と言うように言った。
「弥生さん」とねねは目をむいて抗議した。「悪い冗談は止して下さい、デートだなんて。仕事です」
 健太はまんざらでもないように、にやっと顔をほころばせたが、「そうです、仕事です、弥生さん」と言った。
「それに新幹線じゃなくて、ただの急行ですから」とねねは続けた。「貧乏事務所が新幹線なんて使えるわけないじゃありませんか。人息むんむんの混んだ車内で、殆ど立ちっぱなし」
「どうもご苦労さま」と弥生は言った。「いずれにしても明日も家出娘の搜索ね。早く見つかるといいね。次のお仕事も待ってるし…」と弥生は明るく言った。
 何はともあれ、こんな具合に、河合探偵事務所は社会のよしなしごとの解決への援助を与えることにより、ささやかながらその礼金を頂いて、社会の片隅で何とか存続していた...。

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